ゴムの歴史

ゴムの豆知識

写真:自然のイメージ

私たちの暮らしのあらゆる分野で活用されながら、とくに注目されるというわけでもなく、ごく当然のように存在するゴム。
しかし、その特性(ゴム弾性)の解明には約130年もの年月を要したほど、神秘的で不思議な性質を備えた物質であることをご存じでしょうか。
今なお未解明の部分を数多く残すゴムについて、進化の歴史を先端技術、ゴム製品等の紹介を通してその素顔に最接近。
さあ、身近で未知な物質、ゴムの歴史の世界にご一緒しましょう。

ゴムの木

写真:ゴムの木

ゴムの原料となる液を樹皮から分泌する樹木で、パラゴムやインドゴムなど多くの種類があります。
パラゴムはブラジル原産で、高さ30mにもなる大木です。現在では東南アジアに主産地が移り、世界の天然ゴム生産のほとんどを占めるに至っています。
インドゴムは観賞用として栽培されています。

ゴムの発見

写真:ゴムの木

古来、メキシコ地方にはゴムの木が生息しており、この木が傷ついたりして自然に樹液が流れる事があります。その樹液が木の下で固まって野生ゴムになります。これを昔からメキシコ地方の人々は、遊びでボールとして使ったり水筒といったような簡単な器として用いたりしてきたようです。
 さて、文明社会とゴムとの遭遇と言えば、コロンブスが初めてヨーロッパに伝えた事によると言われています。
 コロンブスの2回目の新大陸航海時に、ハイチ島において原住民の子供たちが樹液から作った黒いボールで遊んでいるところを見て発見したと言われています。
 ゴムの発展はまだ遠い未来で、この後200年余りの間は、ゴムの利用方法と言えば、おもちゃや防水布等であり、ゴムの基本特性である弾性とは関係のない使用用途として使われてきました。

ゴムの加硫方法の発見

写真:研究のイメージ

1770年代、マッキントッシュによるゴム引布の成功で、ゴム工業はイギリスを中心に発展しました。しかし、この頃(ころ)のゴムは、当初、夏は暑さでベトベトで、冬は寒さでカチカチといった具合で、温度の影響を受け易(やす)いという問題点がありました。これを改善するため人々により多種の研究がなされてきました。
 1839年、アメリカのグッドイヤーが、硫黄による天然ゴムの架橋を発見しました。
 研究室で寝てしまった彼のゴム靴に実験中に使っていた薬品がこぼれ、これがストーブで加熱され、翌朝目覚めた彼はゴム靴の弾性が増大している事に気付き発見しました。この発見には、幾つか諸説あるようで、泊まっていたホテルで、硫黄を混ぜたゴムの切れ端をストーブの上に何げなく置き、しばらくして見てみると、熱によりベタベタになっているはずのゴムが革状になり、弾性力を持っている事に気付き発見したというエピソードも残っているようです。
 いずれにしても、偶然により、硫黄によって硬くなり弾性を有する加硫ゴムは発見されました。
 この他(ほか)にも、電気絶縁性や耐久性などの特性を持つことがわかり、工業用材料としての価値は上がりました。

ゴム工業の発展

写真:ゴムの木々

1843年イギリスのハンコックによりゴムの加硫は、ゴムと硫黄の化学結合によるものと発見し、ゴムの加工と機械を発明し数々の加硫方法を開発しました。
1887年スコットランドのジョン・ボイド・ダンロップが空気入りタイヤを考案し三輪車に使用され、以降、ガソリン自動車の発明と共にゴムも開発されていきまた。
利用価値の拡大とともに供給不足となり、価格は大暴騰しました。当時、ゴムは、南米アマゾン流域でのみ採取されていました。
そこで、イギリスは、ゴムの移植を考えます。植民地を持っていた東南アジア各地にゴム農園を作りました。こうして、ゴムのプランテーションは確立されていきました。

産業の発展(自動車工業など)や戦争などにより天然ゴムの需要は一気に増大していき、その中で合成ゴムの化学的研究は進められていきます。
天然ゴムと比べて、合成ゴムの歴史は、新しいものです。始まりは、天然ゴムの組成解明の化学的研究からです。
1860年、G.ウィリアムズによる天然ゴムからイソプレンの単離は、合成ゴムにとって画期的な出来事でした。実際に実用的に用いられる合成ゴムが製造されたのは、第一次世界大戦の時で、世界初の合成ゴムは、天然ゴムの生産地を持たないドイツの代替品を工業的に合成しようという試みの結果でした。その後、ソ連、アメリカやドイツにおいて合成ゴムの工業的生産が始まっています。
そして、アメリカにおいて第二次世界大戦中に、GR-S(現在のSBR)の工業的生産が始まります。この合成ゴムは、戦時下において大きく成長し今日の合成ゴムの基礎を築くこととなりました。
20世紀初頭において、天然ゴムが持たない諸性質を持った合成ゴムの研究開発は盛んになっていき、"汎用(はんよう)合成ゴム"、"特殊合成ゴム"や"高機能性合成ゴム"と発展していきます。

英単語rubberの語源

写真:消しゴム

1770年、イギリスにおいて、ゴムには紙に書いた鉛筆の文字を消すことできるという性質が発見されました。これが消しゴムの始まりです。そして、これは市販されるようになり"rub out(擦り消す)"と呼ばれました。これから派生し、ゴムを意味する英単語"rubber"は用いられるようになりました。

野生ゴムは財宝

写真:ゴムの木々

野生ゴムは、アマゾン川流域でのみ繁殖しており、高価なものであり"黒い黄金"と呼ばれていました。
1876年、イギリスのH.ウィッカムは、ゴムの種子の禁輸政策をとっていたブラジルから種子の持ち出しに成功します。ロンドンの植物園に蒔(ま)かれた種子は芽を出し、その苗木は、当時、イギリス領であった東南アジア各地において栽培されるようになります。こうして、イギリスは、長期にわたり天然ゴムを独占する事になります。

そしてゴムは進化を遂げる

写真:免震ゴム

得意技は、肩透かし。地震を軽くいなす  免震ゴム 

相撲の技でいえば、肩透かし。つまり、地震とまともに勝負せずツボをはずす。
これが免震ゴムの得意技。免震構造とは建物と地盤の間に水平方向に柔らかいバネの働きをするクッションを挿入することによって、建物の水平方向の揺れを地震波と共振しないようにしたもので、このクッションの代表例が免震ゴムというわけです。
一般に、免震ゴムは水平地震力(加速度)を1/3~1/5に低減する効果をもっているとされています。
構造は、ゴム板と鉄板を交互に重ねて加硫接着させたサンドイッチ積層体で、鉛直方向には建物を支える硬さを、水平方向には地震動を緩やかな往復運動に変える柔らかさをもっています。
応用例としては、病院、ハイテクビル、原子力発電所、精密機器工場などがあり、その活用範囲も急速に拡大しています。

写真:風船ダムのイメージ

ぷく~っと膨れて水をせき止める  風船ダム 

チューブ状のゴム袋を河川に取り付け、空気や水で膨らませて水を貯える可動堰、それが風船ダムです。
構造は非常に簡単で、強靭な特殊合成ゴム引布製の風船部分と、それを膨張(収縮)させるための機械、パイプで構成されており、容易に移動させることも可能です。
用途は、かんがい、防潮、水力発電、水道用水取水などと幅広く活用されいます。
すでに米国では30年、日本でも20年余りの歴史の中で約1300ヶ所の施工実績があります。
構造がシンプルで故障も少なく、維持管理費が安いことなどから、さらに採用実績が増えています。

イラスト:電子回路

そこのけそこのけ電気が通る  導電ゴム・減圧導電ゴム 

『絶縁体素材の代表の1つであるゴムが電気を通す』というと、一瞬ビックリされるでしょうが、その実用化は比較的早く、静電気対策用として半導体工場の作業デスクマットや医療関係の機器の床面などに使用されています。
そして、その後のエレクトロニクスの進歩にともない、積極的に電気を流す本格的な導電体としてのニーズが高まり、現在では電子回路用の開閉スイッチの接点部分やインターコネクターなどに、幅広く活用されています。
導電性の秘密は、ゴム素材の中に導電性材料の粉末や短繊維等を混合するというもので、多くの場合シリコンゴムにカーボンブラックを混合したものとなっています。
また、感圧導電ゴムには導電粉として、金属を用いたものとカーボンを用いたものがあり、それぞれデジタル動作型、アナログ動作型として、ニーズに応じた役割を担っています。

History

6世紀アステカ文明。ゴム製の道具を神に捧げる壁画。
11世紀南米マヤ文明。ゴムの使用が推測される遺物。
1493年コロンブス、第2回目の航海へ出発し、その航海途中でゴムボールと出会う。
1770年ジョセフ・プリーストーリという化学者が、鉛筆の字を消すゴムの効用を発見。
1773年ゴムを手に入れた仏国人がゴム引布を作り、英国人がレインコートに活用。
1839年米国人チャールズ・グッドイヤーが、加硫法を発明。
1843年英国人ハンコックが種々の加硫法を開発。
1887年自動車用空気入りタイヤ登場。
1905年米国人オーエンスレガーにより加硫促進剤が発見され、ゴム工業の基礎が確立。
1910年この頃までに、各種研究開発を通して汎用合成ゴムを作る方法が研究的に確率。
1924年これより以降、汎用合成ゴムの欠点を改良した特殊合成ゴム、さらにこれらを進化させた革新的合成ゴムの研究開発が本格化し、現在に至るまで多種多様なゴム製品が誕生。